far beyond
01
―東方司令部 執務室
「えっ?パーティ?」
「ああ、明日将軍の娘の誕生日パーティがあるのだが君も来てもらうことになった。」
「・・・なんで俺が将軍の娘の誕生日パーティなんかに行かねきゃならねぇんだよ。」
「それが、明日のパーティで将軍の娘を誘拐するという予告があったんだ。それで娘には言わず当日警護して欲しいと言われたんだ、
もちろんそれ以前から招待されてはいたのだ
がね。だが、1つ問題がある。どうやら娘は私に好意を抱いているようなのでな、私が1人で行けば必ずや将軍が娘を嫁に!と言ってく
るに違いないと踏んでいるんだ。」
「・・・いいじゃねぇか、将軍の娘と結婚すれば昇進間違いなしじゃん。」
「彼女は甘やかされて育ったらしく少々わがままなんだよ。だから、遠慮したいのだがなかなか策が浮かばなくてな。だが、そこに君が
帰ってくるという報告を受けてピンッときたの
だよ。なんだと思う鋼の?」
「・・・・・・・・・・・・・・なんかすっげぇ嫌な予感がするんだけど・・・。」
鋼のと呼ばれた少年がおもいっきり嫌な顔をして答えた。
彼は金髪金目で髪を後ろで三つ編みにし、赤のコートに黒の上下の服を着、腰のベルトから銀の時計を下げた史上最年少の国家錬
金術師である鋼の錬金術師エドワード・エルリックである。
そして、鋼のと呼んだ大人は、ここ東方司令部の責任者でありエドワードの後見人でもあるロイ・マスタングである、地位は大佐。
今日は報告書を提出に来たはずなのにロイに「明日は空いてるのかね?」と聞かれたから「・・・空いてるけど。」と答えると「明日はパー
ティがあるんだ。君も参加だ。」
と言われ、冒頭に戻る。そして、ロイはエドワードにさらに爆弾を落とした。
「それは、私に婚約者を作ることだよ。その役に君になってもらう。」
「はぁ?!何言ってんだよ!俺は男だぞ!それに婚約者なら女の人に頼めばいいだろ!」
当然エドワードはそれに逆らう。あたりまえだ、自分は男なのだから。
「女性に頼めば本気になられるだろう?それじゃダメなんだよ、他の女の人とデートができなくなってしまうからね。」
「結局それかよ・・・。とにかく、俺はぜってー嫌だからな!頼むなら中尉に頼めよ!」
「中尉は私の警護としてもう行くことが決定してるんだよ。だから観念したまえ、鋼の。」
「絶対嫌だ!!なんで、俺が女の格好をしなくちゃならねぇんだよっ!」
「似合うと思うぞ、なにせ君は中性的な顔をしているし、なにより背が小さいからな。」
背が小さいという言葉にエドワードがキレた。
「誰が女みたいな顔しているうえに豆粒みたいにちっさいだってぇぇぇ!!!!」
「おっと、禁句だったかな。スマンスマン、ハハハハハハハハ!」
「笑うなぁー!」
トントン
エドワードが今にも掴みかからんとしているときに、部屋のドアをたたく音がした。
「大佐、失礼します。」
入ってきたのは金髪を後ろに一つにまとめてバレッタでとめた女の人だった、ロイの側近であるリザ・ホークアイある。階級は中尉。
「大佐、明日の件なのですが・・・」
「あぁ、中尉いい所に来た。今鋼のを説得していたのだが・・・」
「あれが人を説得する態度かよ・・・」
ぼそりとエドワードは言うがロイは無視して続けた。
「どうしても嫌だと言うんだ。中尉からも説得してくれないか。」
「・・・わかりました。」
リザはうなずくとエドワードに向かって言った。
「エド君・・・どうしても嫌?」
「嫌だ。」
エドワードは本当に嫌そうに言った。
「お願い、エド君。協力してくれなかしら。」
「・・・・・・・・中尉がそこまで言うなら・・・。」
「ありがとう。」
「・・・君ね・・・私が説得したら嫌だ!と言うのにこの差はなんだ。」
「だって、他でもない中尉のお願いだし。」
「大佐はエド君を挑発するからダメなんですよ。では、私はエド君と打ち合わせに行ってまいります。」
「ああわかった。では、鋼の明日のお昼にアルフォンスを連れてここに来てくれ。今日は打ち合わせが終ったら帰ってくれていいぞ。」
「わかったけどなんで、アルもなんだよ。」
「君がパーティに行っているあいだにどうするかを決めるのだよ。」
「わかった。じゃあ、明日昼にアル連れて来るよ。じゃあな。」
「ああ。」
そして、エドワードはリザとともに執務室を出て行った。
―東方司令部 仮眠室
執務室を出た後2人は仮眠室に来ていた。中に入ってすぐにリザが話だした。
「エド君、ごめんなさいね。」
「いいって、別に。中尉が謝ることじゃないだろ。」
「でも、女の子なのに女装するだなんて・・・」
そう、エドワードは実は女だったのだ。国家錬金術師になるとき男として生きることを選んだ、男のほうがなにかと便利だし守られる存在
ではなくなるからだ。ラッキーだったのは
国家錬金術師になるときに記入する欄に性別を書く欄がなかったことだ。
現在知っているのは大総統とリザと故郷の人たち、そして弟のアルフォンスだけ。リザに教えたのは
弟の助言もあって、何かと助けてくれるだろうと思ったから。思った通り、リザはエドワードの秘密を守り、色々と助けてくれたり、心配し
てくれた。
「俺は大丈夫だよ。男でいる生活に慣れたから。でも、本当に俺でいいのか?」
「ええ。むしろ、エド君でないとダメだと思うわ。」
「??なんで??」
「将軍のお嬢さんね、本当に性格が悪いの、すっごくわがままだし。それに大佐に近づく女の人には嫌味ばっかりだで、自分の父親より
下の者はおもいっきり見下したりするの。
私はただの側近だとわかってらっしゃるみたいだから嫌味は言われないけどね。だから、普通の女の人だとダメなのよ。エド君ぐらいの
度胸がないと・・・。だから、大佐がエド君を婚約者の代わりにするとおっしゃった時に私も賛成してしまったの。
ごめんなさい。それに、エド君にたまには女の子に戻って欲しかったから。・・・・・・エド君聞いてる?」
「えっ?!あぁ、聞いてるよ。・・・・・・・そっか、ありがと、中尉。そうだなぁ、そんなに性格の悪いお嬢様なら並の女の人じゃダメだな。
よし!ここは、俺ががんばってやるよ。」
エドワードはどこかボーッとしたようにリザの話を聞いていたが、リザに呼びかけられはっとしたように笑顔で返事をした。リザはどこか
上の空のエドワードを見つめていたが、
ふと思い立ったようにエドワードの額に手を当てた。
「・・・エド君、あなた風邪ひいてるんじゃない?なんか、顔色も少し悪いみたいだし、それに少し熱もあるわ。」
「えっ!だ、大丈夫だよ。風邪とかひいてないし!」
「・・・・・・・・・・エド君、嘘つかなくていいのよ。」
「・・・・・・実はここに来る前にアルにも言われたんだ、顔色が悪いって。風邪じゃないかって。でも、アルに心配掛けたくなかったから、
無理言ってここに来たんだ。」
エドワードは実は風邪をひいていた。司令部に来る前も寒気がしていたが、大丈夫だと思って出てきたのだった。だが、仮眠室でリザと2人だということに安心したのかまた
ぶり返してきたのだった。
「原因はなにかわかる?」
「多分・・・。昨日雨降ってたじゃん、実は昨日のうちにこっちに着いてたんだけど、傘持ってなくてさ、びしょ濡れで宿まで駆け込んだん
だ。しかも、疲れてたからちゃんと拭かないで寝たし。アルとは別々の部屋で注意されなかったから。」
「それに、今までの疲れも溜まってたんじゃない?・・・・エド君、明日やめとく?」
「大丈夫だよ。」
「そう?明日は私も付き添いとして行くから、しんどくなったら言ってね。」
「うん。」
「じゃあ、とりあえず熱だけでも測っときましょ。・・・・・・・・・はい。」
リザは置いてあった体温計をエドワードに渡して熱を測らせた。
3分後・・・
「・・・はい、エド君もういいわよ。」
リザに言われてエドワードは体温計を取り出しリザに渡した。
「・・・・・・・・37.5度・・・少し高いわね。帰って暖かい格好をして寝てるのよ。アル君にはちゃんと言うのよ。」
「わかった。ありがと、中尉。じゃぁ、また明日。」
そう言い、エドワードは仮眠室をでて、アルフォンスの待つ宿に帰って行った。
帰ってすぐに、エドワードはアルフォンスに今日あったことと明日のことを話した。